四百七十五話 笑顔が消えた街

 

正午、港に停泊している船舶が鳴らす追悼の汽笛が神戸の街に響く。
海辺の家にも届けられる。
もう、二二年経つのかぁ。
この日ばかりは、どうしても思い出してしまう。
あの日の神戸を。
眼を凝らせば少しは良いことも街のどこか片隅にあったのかもしれない。
それでも、心から笑えたひとはひとりとしていなかったんだろうと想う。
夜明け前に、一切の笑顔がこの港街から消えた。

憶えている一九九五年一月一七日は、そんな日だった。

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