四百五十五話 DARE T0 BE WILD

生まれて初めて、Ireland の映画を観た。
Dare to be wild
原題をそのまま訳せば「敢えて野生となれ」だろうか?
解り難いと考えたのか、日本では Flower Show という題名で配給されている。
現在公開中だが、一般的にはあまり知られていないマイナー・フィルムの類だと思う。
大阪公開楽日の前日、劇場の入りは二割程度で少し残念な始末だったが。
観終わった今、この映画を観逃さなくてほんとうに良かったと思っている。
若きアイルランド女性園芸家の実話を基に映像化された作品で。
主人公でもある園芸家は Mary Reynolds 女史。
物語は、無名の彼女が世界で最も偉大な Landscape Designer のひとりとなるまでを描いている。
英国王立園芸協会が主催する  Chelsea Flower Show は、世界最古にして最高の権威を誇る。
その権威は、Chelsea Flower Show の行方如何によって世界中の園芸の方向性が決するほどに高い。
アイルランドの田舎町出身の Mary Reynolds は、その Show に金無し人脈無しで挑む。
彼女が目指した世界一美しい庭とは?
山査子の古木数本と野草のみが石積みの空間に咲く庭。
故郷 Celtic の自然を色濃く映した庭は、真っ直ぐで力強く格別に美しい。
そして、繊細で精緻に映像化された庭は、実際に眺めているような錯覚にさえ陥る。
二〇〇二年、Chelsea Flower Show に於いてこの庭は見事金賞に輝く。
史上最年少にして、アイルランド人として初の快挙だった。
その後、倫敦 Kew 王立植物園での設計や、BBCの園芸番組の司会を引受けるまでになる。
環境の問題、民族間の差別、宗教文化の対立、権威主義への嫌悪など。
アイルランドという複雑な国の事情もいろいろと織り込まれているようだが。
僕は、Mary Reynolds による自然への矜持が備わった素晴らしい庭を素直に楽しんだ。
庭は、永遠に終りのない作業をひとに強いる。
人間が期待するような調和に付合ってくれるほど、草木は従順ではない。
想いとは真逆の所業を生きている限り繰返す。
世話をいくらしたところで、感謝の欠片も示さず横柄な態度でいる。
造り手が納得のいく調和のとれた庭などこの世には存在しないのではないか?
では、ひとは何故そんな庭を造るのか?
そもそも、庭は自然の一部なのか?

DARE TO BE WILD、観るひとによっては意外に興味深い映画となるかも。

 

 

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