四百三十九話  異次元の世界

Mac に、Mac Book Air に、i-Phone 6s PLUS にと。
ぜ〜んぶ変えてやった。
其の前はというと、旧型 Mac と Galápagos 携帯でどうにか生き延びてきた。
これからも、そうやって生きていくつもりだったのだが。
嫁の全否定により一新することにする。
「携帯はいつも置きっ放し」
「自分の都合で言いたいことは伝えるけど、携帯鳴っても出ない」
「mail はやらないどころか、見もしないし、開けることもしない」
「そもそもあんたの頑なアナログ志向のお陰で、まわりのみんなが迷惑してるの!」
「うるさい相手だからって、口に出さないだけでそう思ってるんだから!」
「あんたさぁ、そんな糞みたいなことやってたら、いつか死ぬよ!」
もうボロクソなのだが、言われてみればそうなのかもしれない。
結果、ご指摘を受入れて同じ改めるならこの際全部変えてやれとなった。
そうして、この騒動が始まる。
事務所に、自宅にと、それぞれの設置は御客様がしてくださった。
それから先、データーの移動や入力に始まり、新たなソフトやアプリの導入など。
慣れない操作でこなしていかなければならない。
いくらなんでも、御客様にそこまでお願いは出来ない。
着手して三日経って遂にブチ切れた。
「なんで、なにするにも一々こんな面倒な手続きを要求されるんだぁ?」
「ID や、PASS WORD だけでもいくつ設定しなきゃなんねぇんだぁ?」
「Tethering って、そもそもなんなんだぁ?」
「頼むから日本語で喋ってくれ!」
なにかを誰かに訊く度に、あんた馬鹿ですか?的な顔をされるのも我慢ならない。
見かねた嫁が。
「そろそろコーちゃんの出番じゃない」
そうだ!奴の存在を忘れていた!
親戚で、出来るおとこだと評判の奴だ!
大学で基礎工学を学ぶんだとか言って、今近くに下宿している。
呼べばすぐに来てくれた。
「でも、俺、こういうの研究してるわけじゃないから」
「そんな言訳は聞きたくない!聞いてる暇もない!すぐやって!」
Mac 本体に、Mac Book Air に、i-PAD に、i-Phone 6s PLUS に、自分の携帯を加えて。
なにかを始めた。
調べて、入力して、確認してを繰返していく。
恐ろしい速度と、意味不明の動作が途切れることなく続いて。
なんだぁ?こいつ?ほんとに親戚かぁ?
夜中の二時過ぎ。
「よ〜し、きたぁ〜、出来たぁ〜」
「えっ?コーちゃん、なにが来て?なにが出来たの?見た目なにも変わってないみたいだけど」
「うん?大丈夫だよ、これでだいたいのことは、おじちゃんにも出来るよ」
「マジかぁ?」

俺には、まるで異次元の世界なようで無理なのかも。

 

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