四百三十四話 景気

景気が思うように上向かないらしい。
株価は低迷し、国内総生産値は伸び悩んでいる。
困ったことなのだそうだ。
誰だって貧乏は嫌なのだから、困るのは当然だろう。
ちょっと聞いた話だが。
文明が一定水準以上に発達し成熟すると、国内総生産量はおのずと減少傾向に転ずるのだという。
喩えば、Smartphone だ。
この小箱を単なる電話だと認識している者は、もはやいないだろう。
中には、恐ろしく多機能な装置が収められていて。
Still Camera や Video Camera には、撮影だけでなく加工・編集・再生機能まで付加されている。
音楽だって、再生して聴くことはもちろん演奏だって可能だ。
テレビも映画もゲームも、見放題やり放題。
細かいところでは、時計、電卓、地図、辞書、計測器など。
ありとあらゆると言っていいほどの多岐に及ぶ。
ここで、一九九〇年代半ばを思い起こしてみよう。
アナログからデジタルへ、そういった頃じゃなかったかと思う。
わずか二〇年前に過ぎない。
当時、この多機能電話と同じだけの満足度を得ようとすると。
電話に、テレビに、カメラにといった具合に買い揃えていかねばならない。
程度の悪い中古品で一部我慢したとしても、一〇〇万円は越えただろう。
それからすると、Smartphone の値段なんてタダ同然だといえる。
少なく見積もっても、差額は一〇〇万円以上にはなる。
あぁ、良かったねぇ。
良い時代になったもんだ。
って、ほんとにそうなの?
これって、ひとりあたり一〇〇万円以上の国内総生産量を押し下げていることになるんじゃないの?
ひとりあたりなんだから、この額に Smartphone の利用者数を掛けることになるよねぇ?
で、いったい総額いくらの国内総生産量が消失したことになるのか?
そういった話なんだけど。
コストが下がり満足度が上がったと喜ぶ一方で、国内総生産量が下がったと嘆く。
茶番もいいとこだと想う。
もはや、そもそも論として、国内総生産量なんて統計値にいったいなんの意味があるのだろうか?

頭悪いからよくわかんないけど、もっとましな物差し用意した方が良いんじゃないかなぁ。

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