三百九十七話 今、選ぶべきデニムとは?

“ DENIM ” ほど。
男女の隔たりなく年齢も問わず、国や時代を超えて多くの人々に愛されたアイテムを他に知らない。
南仏に古代ローマ時代からの Nîmes という街があって。
この地で織られたサージがデニム生地となり、街の名ニームから “デニム” と呼ばれるようになる。
デニムというと米国産の代名詞と思われがちだが、実は仏の産まれなのだ。
そんなデニムを。
これまで三五年の間に、一体どれだけの型のデニム・パンツを創ったり扱ったりしてきただろう?
勘定したことはないが、おそらく相当な数だと思う。
それだけで喰っていた時代もある。
この稼業に就いてデニムと関わったことのない人間なんてまずいないんじゃないかなぁ。
しかし、この永久不滅のスタンダード・アイテムでも時代や流行とは無縁ではいられない。
潮目を見誤るととんでもない痛手を商売的に被ってしまう。
California 州誕生と刻を同じくして創業した Levi Strauss & Co. ですらそうだった。
今、選ぶべきデニムとは?
大袈裟にいうと、この稼業に於けるちょっとした命題なのかもしれない。
そこで、Musée du Dragon として選択したのがこの一本だ。
doublet 井野将之君が創った。
まず、このデニム生地は綿一◯◯%ではない。
経糸には綿糸を緯糸にはウールを用いて交織している。
織組織上、肌面を占めるウールをニードル技法を用いて表面に持出す。
ネップ状にもやもやしているのはそのためである。
暖かくて、柔らかくて、まるでスウェット・パンツのような履き心地がしてストレスがない。
それでもこれが何物か?と問われれば、やはりデニム・パンツとしか言いようがないだろう。
そして、最も評価されるべき点はそのシルェットにある。
ポケットの補強用リベットを生かして二本のアウト・タックを施し腰回りにゆとりをもたせる。
可動域を広げると同時に絶妙のシルェットを実現している。
この型設計を手掛けたのは村上高士君である。
井野君と村上君は、両氏ともコレクション・デザイナーの遺伝子を継いでいて。
その手並みは、このデニム・パンツにも見事に発揮されているのだと思う。
お陰様で、このクソ暑い最中にも拘わらず好調です。
少量だが、同素材でデニム・ジャケットも扱ってみた。
こちらの方は、すでに完売です。

アザ〜スゥ。

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