二十八話 鴨の七不思議

加茂川と高野川が出会うところに、二千年以上守り継がれた森がある。
源氏物語や枕草子に謳われた“ 糺の森 ”。
暑い盛りに訪れると、ひんやりと涼しく値打ちがある。
平安京の時代から伝わる“ 鴨の七不思議 ”というのがあるらしい。
鴨とは、この森が下鴨神社の境内に含まれる事に由来する。
京都には、この手の話が多い。
その中で、夏にちなんだ不思議をひとつ。
盛夏の土用の頃、糺の森にある御手洗池から水泡が沸く。
この泡をもとに生まれた菓子が、みたらし団子であるという。
おしまい。
え~、それだけの話?
ここって、日本が誇る世界遺産じゃないの。
光源氏とか、国歌にある“さざれ石”とか、応仁の乱とかじゃなくて、団子?
しかも、御手洗池って、足浸けて無病息災を願う池のことでしょ。
足で掻き混ぜた水から生まれた団子?
乱暴すぎる話だと思いながら、社務所に顔を向ける。
大きなポスターが目に入る。
“ 御手洗(みたらし)祭開催 ”とある。
マジですか?
この小ネタをもって、祭もやるんですね。
土用の丑の日に開催されるそうだ。
何故そこまで、団子にこだわるのか?
その方が、不思議なような気もするのだが。

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