三十八話 人とモノの個性

ここに、二着の Stadium Jumper がある。
写真では、よく分からないと思うが、この二着は性格が異なる。

上のは、OVER THE STRIPS の大嶺保氏が作った。
とにかく、手触りが優しい。
身生地には、カシミヤ100%のスーツ生地が使われている。
袖革には、極限まで薄く鞣されたカーフ。
ポケットは、MA-1のフラップ仕様。
薄く軽い素材で、シンサレートを包むように設計している。

一方下のは、ROARの濱中三郎氏が作った。
こちらは、無骨な造りに見える。
身生地には、アンゴラ混の肉厚ウール・メルトン。
袖革には、通常の牛革に代わって、しっかりとした羊皮。
ポケットは、革の両玉縁でファスナー仕様。
外観は男臭いが、実際は軽く設計されている。

フカフカとガッチリ、二種類の Stadium Jumper 。
軽量化と細身のシルェット、狙いは双方とも同じである。
それでも、仕上がってみれば、ここまで違う。
これらを作った御両人、見た目の印象も違う。
ひとりは、ユルキャラ、もうひとりは、チョイワル。
どっちが、どっちとは面倒臭いので言わないが、あくまでも見た目である。
面白い事に、その違いが、服作りにも現れる。
まぁ、腕と経験が、自身の表現を確かなものにしている証しなんだろう。
ところで、二人で面白いんだから、十人だともっと面白いかも。
ひとつのアイテムを、十人のデザイナーがそれぞれの嗜好で作る。
良いんじゃないの。
来年でもやってみようかな。
服飾学校の課題みたいだと怒られるかも知れないけど。
これには、ちょっとした銭が絡みますからねぇ。
それに、頼む相手が、業界を牽引している曲者揃いですから。

遊びは遊びでも、ガチですよ。

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