五十六話 タンポポの一生

絵を描いています。
何の絵かというと、タンポポです。
何のための絵かというと、来期 Musée du Dragon のオリジナル・レーベル用です。
昔からの癖で、物事の概要を考える時、⎡考え⎦の基を一枚の絵として描く。
描いた絵が気に入れば、その⎡考え⎦を採用する。
逆に気に入らなければ、その⎡考え⎦は破棄する。
まぁ、癖というより、験担ぎの儀式みたいなもんである。
ところで、日本語でタンポポというと生理用品みたいで締まらない。
が、英訳すると DANDELION となり、再び和訳すると“ 獅子の歯 ”となる。
本葉に見られる切れ込みの様子に由来する。
なんとなく、一丁前な感じで偉そうだ。
嘘か本当か解んないけど。
西洋の何処かには、タンポポを人の生涯に重ねる表現があるらしい。
タンポポの花は受粉期が大切で、最も高く立ち上がって昆虫を呼ぶ。
用が済むと、次に受粉する花に譲って自ら低く伏せる。
そして、綿毛を飛ばす時を迎えると、再び高く立ち上がる。
風を受けて、種をできるだけ遠くに飛ばそうと力を尽くす。
一連の役目を終えると、続く者の邪魔にならぬように頭を垂れて眠る。
根を同じくした数本の家族が、順に同じように生きて死んでいく。
その時々、立ち上がったり倒れたりと、他者を気遣いながら最善を尽くして生きる。
⎡人の一生とは斯くあるべし。⎦という事らしい。
あ~あ、面倒くせぇ~。
タンポポでなくて本当に良かった。
人でも、こんなに評判悪いのに、タンポポだったら勘当ものだ。
まぁ、三年に一度くらい芽生える自戒の念も込めながら描いている。
さらにタンポポは、その生涯の様子が上等なだけではない。
根や葉は、薬草として多くの効能を秘めている。
解毒、利尿,催乳、毛細血管拡張作用、血糖値効果作用など。
いやぁ~、いよいよ頭が上がりませんなぁ。
我家の庭にも、立派なタンポポが居る。
変哲もない雑草だと思ってたけど、あんた、偉いんだね。
てな事を考えているうちに、肝心のタンポポを描き終えた。
実際使用するグラフィックとしてのデザイン処理はこれからだが。

どうですかねぇ?

カテゴリー:   パーマリンク