八十四話 Gay Foodで痩せれるのか?

⎡ゲイの男は太らない⎦
真っ赤な嘘だね。
出鱈目もいいとこだ。
だって、風船みたいな体付きのお茶目なゲイを知ってるもん。
オカマじゃないよ、ゲイだよ。
こういう根拠のない風評の出所は何処だ?
出所は New York で、広めてる奴は Simon Doonan という男らしい。
バーニーズ・ニューヨークの辣腕クリエイティブ・ディレクターだ。
一冊の本を出版した。
“ Gay Men Don’t Get Fat by Simon Doonan ”
その名も⎡ゲイの男は太らない⎦
著書によると。
世の食物について、乳製品や淡水化物というような分類は適切ではない。
単純に、ゲイ・フードとストレート・フードとに分かれるという。
ゲイ・フードは鮮やかな原色であり、含有蛋白質が微量もしくはゼロのもの。
逆にストレート・フードは地味な濃色で、脂質や蛋白質が豊富に含まれるもの。
まぁ、前者の代表がサラダで、後者がステーキみたいな感じだろう。
要は、身体に良く、軽く、装飾に富んだもの程、ゲイ得点が高いと言いたいらしい。
典型的な例として挙げられているのが日本食。
なかでも握り寿司は、
ただの魚の切身を可愛いフィッシュ・ボンボンに仕立てた最高のゲイ・フードなんだと。
フィッシュ・ボンボンって、一気に寿司が嫌いになりそうな表現だ。
栄えあるゲイ・フード一等賞、“ The Gayest Food ”に輝いた食べ物とは?
巴里の Royale通りに構える LADURÉE のマカロン。
鮮やかな色合いの見目麗しいマカロンを求めてゲイの方々が列をなすのだと言う。
マジですか?
この著書ではプロとして、女性のファッションについても触れられている。
⎡僕のお姉さんがレズビアンで、………………………。⎦
え~、ゲイに加えて、おねえちゃんがレズビアンなんですかぁ?
エキセントリックな御兄弟で羨ましいかぎりですが、この辺りで勘弁して下さい。
ところで、ゲイ男性が容姿を執拗にこだわる理由とは何か?
答は恋愛対象が異性ではなく、自分と同じ男性であるためだと言う。
恋愛対象の中に自分の姿を見たり、厳格な視点で比較したりしてしまう。
ストレートの男性は、全く様相の異なる女性という対象に惹かれる。
なので、自分の年齢や体型や容姿を省みないで女性に関心や愛情を平気で抱く。
あ~、なるほどねぇ。
要するに、俺たちは、面の皮が厚く身の程知らずのブタだって言いたいんだね。
そもそも、なんでこんな話をしてるかって言うと。
スタッフと縫い上がった製品を検討していた時のこと。
⎡ちょっとキツいなぁ、Lサイズ持って来てよ⎦
⎡あのぉ~、今はかれてるのがLサイズなんですけどぉ⎦
⎡………………………。⎦
⎡何?⎦
⎡人を蔑んだようなその薄笑いは何?⎦
⎡前から言ってるだろう、そういう態度には敏感なんだって⎦
というような事態の中で、この本に出会った。
しょうがねぇ、この際駄目もとでゲイ・フードでも試してみるか。
晩飯は、フィッシュ・ボンボンの大人喰いだな。

余談だが、ヒヤシンスは、“ Narcist ” の語源となるギリシャ神話の “ Narcissus ”を意味するんだって。

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