百十一話 情報革命の夜明け

風呂に入ってくつろいでいると。
嫁が誰かと電話で話をしている。
⎡いつの話?⎦
⎡嘘でしょ?⎦
⎡凄いじゃん⎦
風呂から上がって尋ねる。
⎡なんかあった?⎦
⎡今日ジェイコムが来たんだって⎦
⎡何処に?⎦
⎡わたしの実家に⎦
⎡なんで?⎦
⎡CATVの設置にだって⎦
⎡いろんな映画観れるんだから良いんじゃないの⎦
⎡それだけじゃないよ⎦
⎡PCも買ったんだって⎦
⎡マジでぇ~、誰が使うの?⎦
⎡ひとりしかいないんだから、ママに決まってんじゃん⎦
⎡八四歳でパソコン・デビューってかぁ?⎦
⎡うん、凄いよねぇ⎦
遂に義理の母が住まう海辺の古館にも情報革命の波がやってきた。
八四歳にして革命の世が明ける。
でもよく考えてみれば家に居ながらにして世界と繋がるんだから悪くない。
“ Inter-network ”
まことに横着な代物だが出歩く事が簡単ではない人にとってはこの上ない効能を発揮する。
高齢者にとっても同じく値打ちものだ。
指先ひとつで諦めていた事や億劫だった事の多くが解決する場合もある。
問題は、受入れるか受入れないかだろう。
⎡私も歳だから⎦とか母は言ったりなんかしない。
嫌な時代になったもんだと言う人もいるけれど。
せっかく今を生きているんだから、時代を拒むことなく、時代を受入れて楽しく暮らした方が良い。
きっとその方が上等な人生を送れるとわかってはいても。
歳を喰うとなかなかに難しい。
どこまでやれるかは別にして、母は生き方を心得た人だ。
先日、母から娘に電話があった。
⎡あんたの店、短パン売れないんだって大変ねぇ⎦
⎡なんで知ってんの?⎦
⎡なんでって、そう書いてあったから⎦
⎡えっ、ブログ読んでんのぉ?⎦
侮れない。

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