百二十二話 SPECTUSSHOECO.

ポツポツと秋冬のアイテムも入荷しているのだが。
本格的には月が明けないと無理だなぁ。
それにしても暑い。
暑くなってようやく必要とされる時に夏物を安く値引きして販売する。
そんなに安く出来るんなら最初っから安く売れよ。
馬鹿だからこの業界にいるのか、この業界にいると馬鹿になるのか。
いずれにしても馬鹿が揃っている事に変わりはない。
そんな業界にも少し賢い人が迷い込む事がある。
米国コロラド州に Boa Technology という会社が在る。
CEO を務めるのは Gary Hammerslag という人物だ。
彼は、もともと医療用カテーテルの開発に携わってきた人らしい。
また、アウトドア・スポーツをこよなく愛し造詣も深い。
一九九八年にスノーボードをしていた時ある体験をした。
ブーツを締める際、立ったままの姿勢で紐を引張ることができなかった。
加えて思うようなフィット感も適わなかった。
ここからが凡人と天才の違いである。
より優れたシステムが出来ないかと研究を始める。
それまで靴を締めるといえば、紐・バックル・ラチェット・ベルクロが使用されてきた。
これらがそれぞれに抱える難点をひとつひとつ開発段階で解決していく。
そして他の lacing system にはない数々の利点を有した最高の新システムが誕生した。
それが Boa Closure System である。
一方、Authentic Shoe & Co. の竹ヶ原君も新しい概念を持った靴創りを模索していた。
⎡革靴でもなくスニーカーでもないデザインと履き心地⎦
人間工学に基づく木型。
縫製を最小限に止めた仕様。
可動性と耐久性を追求し多種に及ぶ芯材や衝撃緩和材で構成されたライニング。
歩行姿勢を合理的に整える設計がなされた Vibram社製の底材。
とどめに登場するのが、瞬時に着脱とフィット感の調整が可能となる Boa Closure System である。
竹ヶ原敏之介としても並々ならぬ想いがあるのかも知れない。
たったひとつのモデルで独自のブランドを仕立ようっていうんだから。
“ SPECTUSSHOECO. ”
良い良いって言うから履いてみた。
確かにかつて経験したことのない履き心地だ。
全くといっていいほどストレスがない。
ラスト出来映えはさすがに申分無くボリューム感も迫力があって良い。
なにより、ガンダム的なダイアルがそそられる。
見かけだけではなく、圧倒的な着脱の良さとフィット感を実現している。
長々と語った能書に偽りはありません。
散々疑ってたけど、これ買おっと。

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