百八十一話 Authentic Shoe & Co. の財布

こうやって、財布がどうのこうのと能書を垂れていますが。
僕は、人生の大半を財布無しで過ごしてきました。
その報いなのか貧乏です。
貧しいから財布を持たなかったのか、財布を持たなかったから貧しいのか。
まぁ、どっちにしても今更な話なのだが。
四十歳を過ぎた頃嫁に言われた。
⎡あんたねぇ⎦
⎡いい歳してお札をクリップで挟んで、小銭をズボンのポケットでジャラジャラさせるの止めればぁ⎦
⎡小学生じゃないんだから⎦
⎡俺の知合いの外人みんなそうしてるよ⎦
⎡あんたの知合いの外人って、あの “ UKオバカ軍団 ” の事でしょ⎦
⎡あんな風になったら、もうお終いだよ⎦
う〜ん、確かにお終いかもしれない。
少なくとも、あぁなりたいと夢に描く人間像にはほど遠い連中だ。
その恐怖から、齡四十歳にして遂に “ Wallet Début ” となりました。
色々と試してみたものの中々しっくりくるモノに出逢えなかった。
四個か五個か買替えたような気がする。
今は、後藤惠一郎さんにお創りいただいた長財布を愛用している。
気に入っていて、細部を改良して “ KUJIRA ” の名称で Musée du Dragon ” でも販売する事にした。
財布を持つようになってから知った事なんだけど。
財布には、習慣に基づく道具であるという事情から人それぞれに様々な好みがある。
長財布しか持たないとか、二つ折りの財布しか嫌だとか。
鞄に仕舞う人や、パンツのポケットに差込む人や、手持ちという人まで色々と分かれる。
札は決まった向きに収める、小銭は絶対に札と一緒にしない等、個々の取決めがあったりもする。
開閉が面倒だとファスナーを嫌う人もいる。
逆に、ファスナー仕様のラウンド型でないと安心出来ないという用心深い人も意外と多い。
また、現金派とクレジットカード派では容量も異なる。
斯様に、挙げれば切りがないほど様々であり、財布屋という商いが世にあるのも納得がいく。
Musée du Dragon は、財布屋じゃなくて服屋なので、
どなたが来られても大丈夫とはいかないまでも、今の長財布に加えて折畳み財布も置きたい。
そして選んだのが、この財布です。
厚みのある上質なイタリアン・ショルダーで仕立られた堅牢な財布。
フロントにあしらった銀製のコンチョは、控えめな意匠ながら懐古的で優美なこのブランドらしい。
創ったのは竹ヶ原敏之介君で、Authentic Shoe & Co. としては靴以外の初アイテムです。
⎡タケの創った財布なら大丈夫だよ⎦
嫁は、竹ヶ原君のもう一方のブランド “ foot the coacher ” 製財布を長年愛用している。
まぁ、この言葉を信じて一度お試し戴ければと存じます。

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