三百四話 肌着

なに? これ? ただの白い T-Shirt じゃん。
まぁ、そう言われたら、そうなんだが。
じゃぁ、こんな T-Shirt 何処かにあるかと訊かれれば、多分他に無いんじゃないかな。
Musée du Dragon では、丈の長いヴィンテージ仕様に仕立てられたシャツを提案させて戴いている。
一九世紀中頃くらいの Work Shirts を想起させるシャツで、数年前に始めた。
最近この Long Shirt が妙に人気で、皆さんよく愛用されている。
そんな方々のおひとりが。
「このシャツ気に入ってよく着てんだけど、こういうのって下にどんな肌着着りゃ良いの?」
「そこら辺の百貨店に売ってるタンクトップでも着られりゃ良いんじゃないですかぁ」
「そこら辺とか、タンクトップでもとか、雑な商いすんじゃねえよ!だいいち俺そんなの着ねえし」
「T-Shirt 派なんだよ!たまには、これでも如何ですかって、スンナリ勧められねぇのかよ! 」
「ちぇっ!面倒くせえなぁ」
「あっ、この野郎舌打ちしやがったな!それが、てめぇの仕事だろうがよ!」
創って創れないことはないのだが、素材からとなると少量生産とはいかない。
専業の下着メーカーを知らないわけでもないし、デザインを請負っていたこともあるけど。
さすがに、一品番だけを仕入れるっていうのも互いに辛い。
そこで出逢ったのが、この T-Shirt 。
藤田将之君が創った JOINTRUST のロング T-Shirt です。
肌と面で接する被服に求められるのは着心地であり、その着心地は素材によって大きく左右される。
使っている素材は、 “ Ultimate Pima Cotton ”
何処の紡績会社が命名したのか知らないが、Ultimate とはまた大層な名である。
Pima Cotton は、エジプト綿と米綿との異種交配種と記憶していたが。
どうやらここでいう Pima は、海島綿の種子を、米国南部の有機土壌で生育させた綿花らしい。
別名を U.S.Sea-island Pima と言われ、現在流通している Organic Cotton の頂点に立つ。
綿糸は、一般的に繊維長が長いほど、品質が高く高値で取引される。
その点に於いて、Ultimate Pima Cotton は、超長綿である海島綿の遺伝子を引継いでいて。
そのしなやかなバルキー感は、最高の肌触りを産む。
藤田君としては、肌着を創ったつもりはないだろうが、これは、僕が探していた肌着だ。
Long Shirt の下に着れる長い丈のもあるし、通常丈のも創ってくれている。
色の展開は、White と
Navy の二色。
あの文句言ってたひとに、入荷の連絡でもさせてもらおうかな。

はて? 誰だっけ? まっ、いいか。

 

 


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