二百六十六話 最高の靴下かも。

⎡ちょっとぉ〜、こんなユルユルになったブリーフ捨ててよぉ!沢山新しいの買ってあるじゃん⎦
⎡こんなの履いてたら、イザっていう時に恥じかくよ ⎦
⎡馬鹿言ってんじゃないよ、そんなイザっていう時がありゃぁ、苦労してねえよ!⎦
⎡ わかんないわよ、交通事故に遭って病院に運び込まれて、若い看護婦さんとかだったらどうする?⎦
⎡あぁ、なるほど、そっち系の話ね⎦
何故、ユルユルになったブリーフを捨てずにいるかというと。
下着が買えないほどに、銭に困窮している訳ではなくて。
意外に、このテンションを喪失したボロ・ブリーフが、妙に履き着心地が良かったりするので。
だが、どんな下着でもこうなるかというと、そうはいかない。
暖かさや清涼感、優しい肌触り、丈夫さなどが問われる。
なにより大切な事は、日々繰返される洗濯への耐久性だろう。
洗濯しても硬くならず、風合いを保ち続ける素材。
さらに欲を言えば、洗えば洗うほど良くなるとなれば最高である。
下着や靴下等、肌に直接触れるアイテムほど、価格がものを言う。
いくら薬品加工が進化したとはいえ、素材そのものに宿る風合いの実現には、まだまだ遠い。
そして、繊維製品の価格に於いて、素材が占める割合は高い。
だから、良い下着や靴下というのは、存外に高価である。
この Vlas Blomme の靴下も、三八〇〇円とそれなりの値段がする。
素材は、ベルギー産 Kortrijk Linnen 。
以前は、麻百パーセントで、もっとざっくりしていて、値段も一二〇〇〇円と法外だった。
試しに履いてみたが、なんか手編みのセーターに足が包まれているみたいな感じがして。
大昔の靴下って、こんなんだったろうと思わせる。
靴下の起源は、定かではないが。
一本の糸と一本の鉤針があれば編目は創れることから、起源は相当に古いとされている。
エジプト辺りで、紀元前の麻製の靴下が出土したというような話を聞いたことがあるくらいだから。
慣れるとこの上ない清涼感を味わえるのだが、最初ちょっと痛い。
それと、すぐにユルユルと下がってきてしまう。
博物館の所蔵品的な魅力はあるのだが。
う〜ん、これって、今の時代どうなんだろうか?
それから、数年経って、改良の上、発売となったのが、今回のこの靴下。
素朴で味わい深い色合い、上質な麻特有の風合い、手頃とは言わないがなんとか我慢できる値段。
意固地にならず、二パーセントのポリウレタンを混ぜることで解消されたユルユル現象。
ブリーフのユルユルは許せるけど、靴下のユルユルは戴けない。
リネンは、吸水力が高く、速乾性に優れている。
また、産まれながらに殺菌効果を備えていて、バクテリアに強く、抗アレルギー効果も期待出来る。
強度に関しても、他繊維を圧倒する強さに恵まれているはずだし。
最高の靴下と言えるかも。
これならいける!
まだ試してないから、たぶんだけど。
試してから売れよって話だけど、なんせまだ寒いもんで。
早速に、御求め戴いた顧客様には、無責任な言草で申し訳ありません。

でも、大丈夫です、たぶん。

 

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