二百二十九話 竹ヶ原敏之介の云う “ ROYAL PUNKS ! ”

この稼業には、潮目というのがあって。
読み間違えると怪我をする。
悪くすれば、息の根が止まったりすることも珍しくない。
潮目とは、流行と同義であって、多様化する世ではたいそう予見し難い厄介な代物なのである。
しかも、一年先の潮目となるとさらに難しい。
一年ほど前。
さて、どっちに舵を切ろうかと悩んでいた。
そんな時、Authentic Shoes & Co. の竹ヶ原敏之介君が口にした一言が、妙に引掛かる。
“ ROYAL PUNKS ! ”
当然、 彼のことだから靴の話なんだろうけど、この言葉に賭けてみようか。
Musée du Dragon は、もともと LONDON 在住のデザイナー達と一緒に始めた店屋である。
“ SCIENCE ” の Tim、“ MAHARISHI ” の Hardy、“ JAS MB ” の Jas、“ NIGEL CABOURN ” の Nigel 達
みんな有名になる手前で、中には週末フリーマケットで稼いでいた者もいた。
そういや、後に、Jamiroquai の衣装を手掛ける “ KOMODO ” の Mark  なんかもいたよなぁ。
皆とは言わないけど、本物の MODS だったり、PUNKER だったりして、カッコ良かった。
Timとか、Hardyは、“ ID ” や “ FACE ” といった UK Culture 誌をモデルとして賑わすくらいに。
確かその頃。
竹ヶ原君も、LONDON から北西へ一〇〇キロほどの Northampton に居て修行中だったと思う。
その竹ヶ原君に、“ ROYAL PUNKS ” と言った本当の意味を訊き正した訳ではない。
だから、当時 LONDON の同じ空気感を味わっていた僕なりの解釈で、僕なりの想いだけど。
反抗や、反逆といった精神は、歳とともに収まっていく。
良くは社会性が身についてきたとも言えるし、悪くは自己喪失とも言える。
しかし、皆が皆、同じ成長を遂げて大人になるわけではなく、稀に Anarchy な奴も育つ。
若い時分に PUNK の洗礼を受け、その精神性を消失せずに生きてきた上等なAnarchy 爺さん。
僕のまわりにも数人いらっしゃるが、この方々、どっから眺めても文句なくCOOL だ。
ちょっと怖くて、滅茶苦茶なことを言ったり、やったりもするのだけれど。
何事につけても、流儀に反した行為を嫌う。
自身も筋目をきっちり通すかわりに、筋を通さない相手には絶対に容赦しない。
仕事も、遊びも、超一流、目指して登れる域ではない。
“ 社会にも、時代にも、へつらわなくとも、ここまでになれんだぜぇ! ” みたいな。
そんな先輩方へ、敬意と畏怖を込めて、お似合いの服をお勧めするとしたら?
これが、僕の、Musée du Dragon の、次に向かう方向です。
今は、全体の三〇%くらいのアイテム数だけど、これから増やしていきます。
ところで、この豹柄の Lace Up Shoes は、竹ヶ原敏之介作で “ Knock Out ” と言う。
飛切り上質なハラコ素材。
7 holes と低く抑えられた Shaft。
足首に吸付くような仕立の Top Line。
内側に思い切って抉られる Shank。
磨き込まれた真鍮 Eyelet。
竹ヶ原敏之介流 “ ROYAL  PUNK ! ” の実像が、此処にこうして在る。

すべては、この一足の靴から。

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