七百四話 塩鯖重

鳥取市湖山町。
土地勘がなくわからないが、大学や空港から徒歩圏内らしいのでそう辺鄙な場所でもないらしい。
まわりは住宅街で、店屋は一軒此処だけだ。
創業は、昭和四〇年代半ばでもう半世紀は超えている。
どこにでもある地元で愛され続ける普通に旨いこの食堂に普通じゃない一品があるという。
食に間違いのない従姉妹の次女からそう聞かされて訪ねてみた。
屋号は “ 更科 ” で、この名も丼物や饂飩を商う飯屋によくある名だ。
品書には、きつねにたぬきといった麺類から親子丼などの丼物、定食ではとんかつ定食とかが並ぶ。
まったく普通の面々のなかに見慣れないものが記してある。
“ 塩鯖重 ” ?
普通じゃない一品とはおそらくこれだろう。
早速に注文してみる。
飯に焼いた塩鯖が盛ってあるという彩りの悪い絵面を想像して待っていると。
目の前に置かれたのは、なんとも色合い豊かで華やかなお重。
見てくれが、店屋の外観、店内、亭主、品書とはまったく通じ合わない派手さ。
なんですか?これは?
箸で掬いあげてみる。
焼いた塩鯖、玉子焼、鯵?の刺身、とびっこ、青葱が、白飯の上に盛られてある。
そこに、独特の甘辛いタレがかけられているのだが、このタレがまた絶妙に旨い。
塩サバの塩加減や焼加減、卵焼きの甘さ、とびっこの食感、刺身の歯応えなど。
とにかく、それぞれの具材に施された塩梅が素晴らしい。
これは、家庭では到底再現できない味だ。
この愛想の欠片もない亭主凄ぇなぁ。

鳥取を訪れた際には “ 更科 ” の塩鯖重を是非!勘定は 一五〇〇円です。

 

 

 

 

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