
前話からの肉宴は一日では終わらず、翌日の昼に向かったのはカツ丼専門店。
阪急電鉄 今津線 仁川駅。
中学・高校・大学と一駅手前の駅で降り通学していたので馴染み深いはずなのだが。
四十年以上も刻が経つとまったく見知らぬ場所となり、懐かしさすら湧いてこない。
カツ丼専門店 “ 桜花 ” は、その仁川駅前に在る。
日本国公邸料理人だった伊永大樹氏が、亭主として営む。
商いものは、ロース二二〇グラムの上と一七〇グラムの並、数量限定のリブロース。
この三品のカツ丼だけで、他にはないという潔い飯屋だ。
二二〇グラムのリブロースカツ丼をご飯大盛で注文する。
ふつう丼物といえば注文するとサッと出てきそうなものだが、此処はそうではない。
結構な手間と刻がかかって、ようやく供される。
待っていると、半空きの蓋から黄金色の豚カツが覗いた丼が目の前に。
Looks so yummy!
見た目の破壊力が半端ない。
しかし、このカツ丼ちょっと変わっていて。
豚カツを汁と卵でとじずに、ふんわり半熟にした卵の上にのせただけ。
さらに、飯は、白米ではなく一六穀米が盛ってある。
そして、上からほどよく甘いタレがかけられるという変り種だ。
汁でとじられていない分、豚肉の旨味が誤魔化されず味わえる。
加えて、豚カツ衣のサクッとした歯応えも損なわれない。
よそわれている一六穀米の香ばしさが、カツ丼の重さを減じさせ食がよく進む。
また一六穀米に含まれる Vitamin B2 は、脂肪を燃やし尽くしてくれる。
よって、このカツ丼は何杯食したところで健康に良い。
なるほどなぁ、良く考えられてるわ、このカツ丼。
亭主に。
「ねぇ、この豚肉って熟成させてるの?」
「はい、なんちゃって程度に軽く熟成させてます」
「あまり熟成させすぎるとカツ丼には向かない気がして」
青森県産の地養豚に衣をつけ低温でじっくりと温めた後、高温でサッと揚げる。
この脂っこくなくあっさりと、それでいてみずみずしい食感は他にはないと思う。
これは、後をひく旨さだ。
亭主の伊永大樹さん、割烹着には胸に日の丸と日本国政府の桐花紋の刺繍が。
お若いが、立姿の良い料理人だと想う。
ご馳走様でした、また近いうちに。


