五百九十七話 シチリア風カワハギの煮付

獰猛なカワハギを美味しく食べる件。
一年を通して獲れる魚だが、身の旬と肝の旬が、それぞれにある。
身の旬は、産卵を終えて体力を取り戻そうと餌を食べまくり太っている夏。
逆に、肝の旬は、冬だとされる。
カワハギは、寒くなると身ではなく肝に脂肪を蓄える習性があって、冬場に肝が肥大化するから。
通説で、真実かどうかは知らないが、そう謂うひとが多い。
いづれにしても、いつ食ってもカワハギは、それなりに旨い魚だ。
誕生日に、明石の伊料理屋 “ CHIRO ” で友人と飯を食うことになっていた。
二週間前からの予約受付が、わずか数分で埋まってしまうという人気は、未だ衰えを知らない。
“ CHIRO ” では、その日仕入れた魚を盆に載せて卓に運び、選んだ魚を希望の料理に仕立てくれる。
この日の盆には、オマール海老、鯛、鱸、笠子、チヌなどに混じってカワハギが 。
カワハギを注文するとして、それをどう調理してもらうか?に頭を巡らせる。
ナポリ伝統のピザ窯で焼く? Acqua Pazza ? 素人が思いつくのはそんなところだ。
玄人に訊く。
「なんか、こうもっとカワハギを美味しく食べるやり方ってある?」
「そうですねぇ、馬鈴薯とオリーブの実と一緒に煮付けるっていうのも意外と美味しいですよ」
「なるほどね」
なるほども何も、全く味の見当すらついていなかったのだが、行きがかり上そうすることにした。
そして、供されたのがこの一皿。
「なんだぁ!これ!クッソ旨いわぁ!」
ただ煮付けただけで、どうしてこんなに旨くなるんだろう?
塩加減、煮具合で、風味や食感がここまで違うものなのか?
それとも、“ CHIRO ” には、謎の調味料が存在するのか?
やばいなぁ、この飯屋!
そこで、“ 獰猛なカワハギを美味しく食べる件 ” の正解です。

“ CHIRO ” に行け!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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