三百七十七話 ANSNAMの中野靖と創りました。

ANSNAMの中野靖と創りました。
そうは言っても口を出したのは生地のことだけで、他については先生が創った。
この先生、色々と口を出すとウザがって何もやらない。
かといって、全く口を出さずにいるとこれもまた何もやらない。
基本どっちにしてもやらない。
“ 能ある鷹は爪を隠す ” と諺にはあるけれど。
ずいぶん長いこと爪を隠しっぱなしで、獲物を獲っていない。
なのでずっと腹ぺこだ。
僕は、先生の親でもないし、兄弟でもないし、友達ですらない。
腹ぺこだろうが、なんだろうが、知ったことではない。
にもかかわらず、デビュー以来この残念な縁が切れないのはどうしたことだろう?
それは、僕が服屋で、先生が服創りの特異な才に恵まれていたから。
その一点に尽きる。
Musee du Dragon にとって、この特異な才はずっとかけがえのないものだったように思う。
他のモノでは補えないなにかが、先生の服には備わっている。
そのなにかは。
撚り方向を違え真夏に心地よく過ごせるように工夫されたこのシャツにも同じく備わっている。
ご覧になって袖を通して戴ければ、お解りになると思う。
「え〜と、このシャツ幾らにすることになってましたっけ?」
「幾らもなにも、それは誠意の問題だって言ったよねぇ、日頃迷惑かけてんだから」
「誰に?」
「御客様にも、俺にもだろうがぁ!」
で、三八◯◯◯円となっております。
一応の誠意は見受けられますが、腹ぺこなのでこれでご容赦ください。

それはそうと、もう一型はどうなってんだよ?

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