二百八十六話 OVER THE STRIPES の夏支度

今年の夏は、OVER THE STRIPES で、暑気を払うつもりでいて。
そのために、Musée du Dragon 用として、幾つかのアイテム製作を特別にお願いもしている。
そして、こんなのもある。
“ 扇子 ”
意外なアイテムだが、創りもちゃんとしていて、ちゃっちい感じがしない。
今では、噺家や神主でもないかぎり、風を送る用途以外で使うことのない夏限定グッズだが。
その昔、扇子は、儀礼にも用いられるほど日本人にとって大切な道具でもあった。
なので、あまりに安っぽいものも如何なものかと思う。
この扇子、白竹堂謹製らしい。
大抵の京都人なら知っている老舗の扇子屋である。
創業は享保三年というから、三百年ほどになるのだろう。
元々は、西本願寺前に在って、お寺の扇子を商っていたらしい。
そんな由緒正しき扇子にも、目を凝らせばこんな怪しげな蜂が飛んでいる。

西本願寺だろうが、浄土真宗だろうが、関係ねぇべぇ。
僕じゃないですよ、大嶺保君がですよ。
僕は、これでも門徒の末席に居ますから。
「門徒物知らず」なんて言われないように、ちょっと扇子にまつわる小ネタを披露しておこう。
扇子には、「京扇子」や「江戸扇子 」といった地名を冠した呼名がある。
“京” と “江戸” で、何がどう違うんだろう?
基本的には、“江戸” の方が、“京” より骨の数が少ないのである。
噺家の知合いに訊いた話では、骨の数を減らしてくれと注文する江戸っ子もいるらしい。
それが、粋なんだそうだ。
もうひとつ、製造工程が違う。
“京” では、扇骨、要、扇面、絵、仕立をそれぞれの職人が分業する。
対して、“江戸” では、ひとりの職人が全工程を担う。
出来にどれほどの差があるのかは知れないが、伝統産業の盛衰には影響したみたいである。
江戸には,数えるほどしか扇子職人は残っていない。
まぁ、どっちでも良いような話なんだけど、そういったもんらしい。
で、この OVER THE STRIPES の扇子は、立派な京扇子であるのだ。
今年の夏は、いい扇子で、パタパタいい風をおこしてみてはどうだろう?

ちょっといけない蜂が、飛んでいるけど。

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