二百十九話 してはいけない事をする男。

Over The Stripes 2013 – 2014 fall & winter collection
一目で気に入ったシャツがあった。
なんともイケテナイ配色。
何故か、妙にそそられる。
擁護する訳ではないが、デザイナー大嶺保さんの色感覚は日本人離れしていて洗練されている。
なのに、このシャツに限ってどうしたことなのか?
無地だけじゃなくて、格子柄のもあるのだけれど。
どれも、なんとなく配色が野暮ったい。
不思議そうにしていると、大嶺さん本人がやって来て。
⎡解りますぅ? ほら、フリースで有名なアウトドア・メーカーですよ⎦
⎡あぁ、そこかぁ!⎦
これって、そこのフリース・ジャケットの配色をシャツに映したんだぁ。
だから、ポケットの仕様がこうなるんだぁ。
配色、仕様、素材感、細部にまで独自の考察に基づいた洒落が仕組まれている。
大嶺流 MANIAC な服創りは、玄人の受けが良い。
実際、mastermind JAPAN の本間君をはじめその筋のファンも多い。
それにしても、ほんとに困った人である。
有名なものや、ステイタスの高いものや、万人にウケてるものを見つけると茶化さずにはおれない。
標的にされた先から訴えられようと、我慢出来ない。
我慢するつもりもない。
いけない男、それが大嶺保さんなのである。
温和で、人当たりも良く、賢い人なのだが。
その身のどこかに、いけない悪魔が棲んでいるのだろう。
本間君から、巴里で OVER THE STRIPES がコレクションを披露していると聞いた。
会場は、Saint-Honoré 通りに面した超高級ホテル。
同じ通りには、世界に名高いメゾンの多くが、本店として軒を連ねている。
なのに、あろうことか。
鼻先に所在する世界的メゾンを嘲笑うかのよな Parody Collection を並べ立てる。
してはいけない、明るく、楽しい、背徳のクリエーション。
“ OVER THE STRIPES ”
ひとりの偉大なデザイナーを思い出した。
Francisco Moschino ミラノのランウェイを席巻し、一九九四年に四〇歳半ばで逝った天才。
一九八〇年代、頻繁に CHANEL の Parody Collection を発表していた。
中でも、MOSCHINO 版 CHANEL SUITS SERIES は服飾史上の伝説として語られている。
Parody は、思いつきや、銭さえ儲かれば的な模倣とは異なる。
明確な意志と、見識と、技術と、時には対象への愛情や反骨も精神的には必要なのかも知れない。
日本人デザイナーには、苦手な領域だと思っていた。
そういう意味では、OVER THE STRIPES は日本に於いて希有の存在だろう。
いつの日か、いや近い将来、僕は、MOSCHINO の再来と称される日が来ると信じている。
大嶺保氏は、才と覚悟を持って今日も元気にいけない事をする。

良い機会だから、次回は、気難しいあのブランドでもパロってみる?

 

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